2020.01.29(水)チャリティーサッカー2019 ふれあい活動“グリーティングDAY” in 岡山(1日目)
参加した選手とOBは、JFA公認指導者ライセンスB・C級を保有する17名です。(※括弧内、所属チームは当時)
中原彰吾(仙台)、佐藤優也(千葉)、柴崎貴広(東京V)、瀬沼優司(横浜FC)、伊藤大介(相模原)、山本真希(松本)、浦田延尚(松本)、苔口卓也(富山)、代健司(富山)、上田康太(岡山)、金山隼樹(岡山)、竹内彬(讃岐)、永田亮太、(讃岐)、玉林睦実(愛媛)、河原和寿(愛媛)、安在和樹(鳥栖)、渡辺亮太(OB)。研修インストラクターは2名です。大野真・加藤健二(日本サッカー協会)。
1日目のふれあい活動は、倉敷市真備町で開催されました。真備町は、「平成30年7月豪雨」により、地区内を流れる小田川の堤防が決壊し、区内の約4分の1が浸水しました。矢掛中学校教諭の得松学さんが、一行の移動中のバスの中で、災害と復興の進捗状況をビデオ映像とともに約20分間、説明しました。「選手の皆さんが、すごく真剣に話を聞いてくださる様子が印象的でした。バスが真備町に入り、どこまで浸水があったかを実際の建物で示すと、身を乗り出して見ていました」。
最初に訪れたのは、『まきびの里保育園』です。屋根のあたりまで浸水したため、園舎は取り壊し、2018年9月から旧穂井田幼稚園で保育を再開しました。2019年11月に現在のプレハブ園舎が完成し、元の場所に戻ることが出来ました。新園舎は2021年秋に竣工予定です。
「じゃあ、遊びましょう!」の掛け声とともに、子どもたちが選手のもとに駆け寄って行きます。子どもたちが蹴るボールをゴール前で待つのは、柴崎貴広選手、佐藤優也選手らGK陣。金山隼樹選手はたくさんの園児たちと鬼ごっこをしていました。岡山県出身の苔口卓也選手にも多くの人から声がかかります。
ファジアーノ岡山のユニフォームを着用した松尾佳奈先生は、年に何度かJリーグの試合を観戦するそうです。「子どもたちと触れ合っている時の選手の顔は、プレー中のかっこいい表情とはまったく違って、優しいですね。こんな光景を見ることが出来てよかった」と教えてくれました。
次に訪れたのは、真備東中学校です。校舎の1階が浸水したため、現在は校舎の2階以上と、プレハブの校舎で授業をしています。プレハブの校舎は2棟、グラウンドに建てられました。真備中学校の生徒もここに通い、1棟ずつ使っています。以前の半分のスペースとなったグラウンドは、野球部とサッカー部で共有しています。
グラウンドでウォームアップしていたのは、この2校のサッカー部50名の中学生です。選手は2つのグループに分かれ、「守備(ボールを奪う)」、「ポゼッション(サポート)」、「パス&コントロール」など、テーマに沿って指導を行ない、その後は中学生チームとプロサッカー選手がゲームをしました。
真備東中学サッカー部、元キャプテンの3年・藤本兼輔君はこう話します。「プロの選手から直接、教わるのは初めてでしたが、的確な指示をしてくれました。ゲームではレベルが違いました(笑)。安在和樹選手がオーバーヘッドをした時点で、ヤバかったです。あんなコースに打てるのかって、肌で感じられて楽しかったです。機会があればリベンジしたいです(笑)」。
【参加選手コメント】
◆代健司(富山)
「災害時の映像を見て、被災された得松先生から話を聞きました。子どもたちに笑顔を届けたい、と思いました。完全な復興はまだ先だと思いますが、笑顔でボールを追いかけている子どもたちの姿を見ることが出来て良かったです。子どもたちそれぞれに個性があって、グループ全体を上達させるためには、伝える時の自分の語彙力が大切になると思いました。日本代表でも若い選手が増えていて、そういう選手を自分が育てられたら、いちばん嬉しいと思います。日本サッカーをより高いレベルに発展させるために、しっかりと勉強して、指導に携わっていきたいと思います」
◆苔口卓也(富山)
「うまく伝えられた時、子どもたちはすぐに変わって、上手くなって行く。そういうのが見られる喜びがあります。僕らが中学生の頃は、こういう技術の練習より、走ることが多かったんで、まったく違います。小さい時から、良い練習をしてもらわないといけないので、考えさせられます。
僕は岡山にはあまり帰ることが出来ていなくて、今回が今年初めての岡山でした。岡山でこの活動をやるということについて、特別な思いがあったので、参加できて嬉しいです。少しでも元気、勇気を与えられたらいいなと思って来ましたが、良かったです」
◆玉林睦実(愛媛)
「真備町の被害の様子をずっと心配していました。保育園では皆が笑顔を見せてくれて、中学でも皆がサッカーを楽しんでいるのを見て、少しほっとした部分はあります。自分自身がサッカー選手として頑張って、もっと支援をしたいと思っています。(Q:愛媛県も西日本豪雨で大きな被害を受けました)愛媛でも浸水被害があり、すぐにチームで行って部屋の片付けや泥の排除などを手伝わせてもらいました。個人でも支援しました。サッカー選手として出来ることは、地域で活躍して皆さんを笑顔にすることだと思うので、そこに集中したいなと思いました。今日の指導は、めっちゃ難しかったです。僕自身は情熱的な指導者が好きなのに淡々とやっちゃって、もうちょっと褒めてあげれば良かった。指導することはサッカーと向き合うことなので、違う観点から自分を見ることになり、成長できると思います」
◆伊藤大介(相模原)
去年の災害後、ファジアーノ岡山で真備町を訪れた時の様子が記憶に鮮烈で、今日は、災害直後に支援物資を届けた金山選手からも、町の変化について教えてもらっていました。1年半という時間は過ぎましたが、まだまだ大変な状況だと思います。今回、実際の中学生を相手にして指導をするのは、ライセンス講習の時とは全然、違いますね。オーガナイズで選手をコントロール出来ることは新たな気付きでした。僕ら選手の強みとして、実際にプレーをして、それを見てもらうことが出来るので、わかりやすく指導したいと思います」
◆永田亮太(讃岐)
「昨年の災害の後、カマタマーレ讃岐で真備町を訪れ、サッカー教室をしたんです。その時、小学生たちが楽しくサッカーをやっていた様子が印象的だったので、今日もみんなが何かを得てくれたらいいなと思って来ました。今日も笑顔を見せてくれて、うれしかったです」
◆瀬沼優司(横浜FC)
「まだ完全に復興できたわけではないですし、仮設住宅に住まわれていたり、生活が戻ったわけではない方々がたくさんいて、でも今日は、そんな状況の中でもサッカーをしてくれていることが、すごくうれしいです。僕たちに出来ることはわずかなことで、一日も早く復興を祈ることしか出来ませんが、今日ふれあえたことで、楽しかったな、とか、何でも良いので、何かを感じてもらえたら、この活動に参加した僕たちもうれしいです。一緒にボールを蹴ったことが、思い出のひとつになったら嬉しいです。
頭で思っていることと、実際の指導はまったく違いました。僕がB級ライセンスの講習ではプロのキャリアの選手を指導する体験はありましたが、守備の基本が頭の中に入っているから、言わなくてもわかっているところがあり、現象が出やすいことを感じましたが、今日は、良い意味でも悪い意味でも自由な動きが出て、『そこでそう動くか』ということが起きる。だから突発的なことに対しても柔軟に構えていないとコーチングが出来ない。そういったところは指導者として対応して、良い指導者にならなければと思いました」
◆河原和寿(愛媛)
「愛媛でも昨年は大きな被害があり、今も変わらず苦しい思いをされている方々が多いです。それでも少しの希望、光を見て、日々を一生懸命に生きている子どもたちの笑顔を見ると、この子たちが早く、もっと良い環境で、幸せになって欲しいと思いました。復興に向けて自分たちが出来ることは、サッカーだけでなく、違う面にもあると思いました。改めて、こういうことを肌で感じることが出来る機会でした。今日は地元の中学生たちを指導して、選手のレベルに合った指導が必要になると思いました。こちらが高い理想を持つこと、そこを目指させることは、指導者の役割のひとつですが、現在の実力を考えて、それに合った目線で指導をすることの難しさは、実際にやってみないとわからなかったです。すごく良い経験になりました」