2016.12.18(日)チャリティーサッカー2016 ふれあい活動“グリーティングDAY” in 宮城(2日目)
参加選手は渡辺広大(山形)、坂田良太、山本大稀(以上、栃木)、松下裕樹(群馬)、岡本昌弘(千葉)、稲田康志(柏)、榎本達也(FC東京)、李漢宰(町田)、近藤祐介(相模原)、土屋征夫(甲府)、西川優大、國吉貴博、平出涼(以上、富山)、太田康介、作田裕次、可児壮隆、玉城峻吾(以上、金沢)、角田誠(清水)、関口訓充(C大阪)、伊藤大介(岡山)、木島良輔、小澤雄希(以上、讃岐)、相澤貴志(徳島)。 ※所属クラブは参加時
ふれあい活動を行う前に、この日まず向かったのは南三陸町。津波によって骨組みだけになった町の防災対策庁舎はテレビ等で頻繁に報道されましたが、震災遺構として昨年から20年間遺すことが決まりました。現在はサビ止め作業のためシートに覆われています。この作業の影響で敷地内に立ち入れないため、選手たちは100mほど離れた献花台のある場所から庁舎を臨みながら、語り部ガイドの説明に耳を傾けました。
沿岸部から約700m離れた庁舎は、地上12mの高さ。その屋上を津波が越えていき、この庁舎では43名が犠牲になりました。南三陸町全体では850名が亡くなっています。また、震災後は水のない状態が4カ月も続いたこと、法律によって元の土地に戻れなくなったこと、精神的なハンデを抱える人が多く出たことなどの説明もあり、それを聞く選手たちは、なかなか言葉を発することができない様子でした。
その後のふれあい活動で向かった先は、登米市の東和総合運動公園多目的グラウンド。
前日の指導は中学生対象、この日は小学生対象という違いはありましたが、前日と同じように「観ること」、「ボールを奪うこと」など、テーマごとに設定された練習メニューに沿って、選手が指導を行いました。
周囲で見ている選手たちから一斉に「ナイスパス!」と声がかかる元気のよいグルーブでは、4人参加したGKのうち、榎本選手が指導していました。「どうしたらもっと前を向けたかな?」「前を向いたらボールの受け手も準備できるよな」と、子どもたちに考えさせながらベターな方法へと導いていました。
李選手が強調したことは、「トラップ1つで変わってくる」ということと「相手ディフェンスが来てもビビらない!」など、どんな状況でもしっかりとボールをコントロールする大切さ。ボールを奪うテーマで指導していた小澤選手はボールに対するポジショニングに言及しながら、「チームみんなで協力してボールを取って!」とコミュニケーションの大切さも強調していました。負傷中で最近ギプスを外したばかりという関口選手は、動ける範囲が限られた中で真剣な視線と口調で指導していました。いい守備をした子どもに「ナイスディフェンス!」と声をかけ、「最後まであきらめないことが大事だよ」と伝えていました。
最後は、選手チームと子どもチーム対抗のミニゲームを行いました。指導実践では教える側と教わる側に分かれていましたが、ミニゲームではより楽しむ要素が加わります。木島選手が子どもたちに囲まれてボールを奪われるシーンでは大いに盛り上がりました。選手チームはゴールを決めて雄叫びをあげるなど、子どもたち以上に楽しんでプレーをしていました。
2日間のふれあい活動を終えた選手たちは疲れも見せず、地元の方々が作った振る舞いの豚汁に舌鼓を打ちながら岐路に着きました。
【ふれあい活動後の選手コメント】
◆関口訓充(C大阪)
「仙台、宮城県内の活動に参加しましたが、自分を育ててもらった地域でもありますし、育ててもらったクラブがある場所なので、そこで子どもたちに夢を与えていけたらいいなと思います。
宮城県のサッカー協会の方とも話をしたら、最近は子どもたちが少なくなってきているということでした。1学年で10人とか、1チーム作れないほどというところもあると聞いて、震災の影響もあって転校してしまう子もいるのかなあ…と。だからこそ、ここに来て子どもたちにサッカーを楽しむということを教えることが大事なのかなあとも思います。早く子どもたちが戻ってこられるように、少しでも復興の手伝いができればと思っています」
◆岡本昌弘(千葉)
「南三陸町が6年近く経ってああいう状況かというのは、あらためていろいろと感じることがありました。少しでも力になりたいな、なんとかしたいなと…。プロサッカー選手という立場にいて、一般の方々にはできないようなことも経験させてもらっているので、責任を持って行動したいです。
子どもたちは元気でした。こちらも元気になるし、サッカーが好きな子たちなので、逆に力をもらえます。頑張らなきゃなと思います」
◆伊藤大介(岡山)
「被災地に来て子どもたちと一緒にふれあって、僕自身もいろいろと思うところがあります。映像などでしか見たことがなかった南三陸町の様子を現地で直接見て、思う部分が大きいです。直接来て良かったと思いました」
◆作田裕次(金沢)
「みんな前向きに頑張っていると思いますけど、こうして子どもたちとふれあって、少しでもプロの選手たちへの憧れを持ってもらおうという気持ちはそれぞれの選手たちにあると思います。
子どもたちは、すごく純粋です。昨日の中学生は少し照れがあったりもしましたが、ボールを使ってふれあえば積極的に楽しんでくれる。そういう姿が見られて、来た甲斐があったかなあと感じます」
◆稲田康志(柏)
「子どもたちと楽しくできたので、いい機会だったと思います。普段、サッカー選手として活動していたら、子どもたちに教えるという機会はそんなに多くないので、子どもたちのキラキラした目を見ながら指導しているのも楽しかったです。僕たちがプロサッカー選手であることをみんな知っている子たちなので、僕たちの言葉をひとことずつ一生懸命に聞いているし、僕たちのキック1つ1つを見ているので、何かを伝えられればいいなあと思いながら指導しました。
南三陸町の被災地に実際に行ったことがなかったので、衝撃でした。あの防災庁舎の高さまで津波が来たとは…。何mというのを言葉では聞いていても、実際に目にしてあらためて恐ろしさを感じました。言葉が出なかったです。今こうしてサッカーができていることを幸せに思います」
◆渡辺広大(山形)
「2日間、楽しかったです。天候にも恵まれて、天も『子どもたちと戯れてくれ』と言ってくれているようでした。面識がある選手、ない選手いましたが、楽しくやれて良かったです。
第2の故郷が仙台であることは間違いないし、山形にも2年いたし、東北には縁があると思っているので、こういう活動を選手会としても個人としてもやっていきたいです。
震災を経験した当事者はベガルタにも少なくなりましたし、クラブを離れてしまっても頑張ってるんだよというところを見せなければいけない立場ではあると思うので、みんな全国に散らばっていますけど、そういったところも発信していきたいですね」