社会貢献活動

2011.09.04(日)「ふれあいサッカーキャラバン」大船渡市立大船渡小学校

午後の会場となった大船渡小学校には、大船渡地域を中心に活動中のスポーツ少年団「大船渡三陸FCシーガル」と「FCサンアルタス大船渡」の2チームが参加した。

 大船渡小学校のグラウンドには砂と土が交じりあっている。それもそのはず、被災した瞬間、10m以上の津波がグラウンドを襲い、校舎の一階すべてが海面と化した。「思いっきり逃げた」と振り返りたくない津波を話してくれたのは大船渡三陸FCシーガル(以下、シーガル)の新沼コーチ。彼もまた、津波の恐怖を肌で味わった一人だ。

「チームには被災している子供・保護者はいませんが、家を流された子供、仕事をなくした保護者がいます。練習場もゴールポストも練習用具・備品すべてが津波で流されました」

 今は大学のグラウンドをはじめ、借りられる場所を探して、いろんな場所で練習をしている状況だというシーガルのメンバーは、三陸町・大船渡町・陸前高田市など、いろいろな小学校・中学校から集まって構成されている。チームを再び結成して印象に残っているのは「大勢の人が亡くなっている光景を見て、感じて、落ち込んだ子供たちの笑顔なき練習風景」であった。メンバーが全員そろうまでには「サッカーを辞めます」といった声を上げる家庭も多かったそうだ。無理もない。保護者のほとんどの方がクルマを流され、職場を失ったという状況である。そうした状況を打破すべく、送り迎えは保護者同士で協力し合い、会費を格段に下げ、再びチームが動き出すところまで行き着いた。

 もう一つのチーム「FCサンアルタス大船渡(以下、サンアルタス)」は、大船渡市内の小学生が所属しているスポーツ少年団だ。被災前の練習場であった盛小学校には仮設住宅が建ち、シーガルと同じく、練習場所を探しては練習をする状況だ。今日を向かえる中でサンアルタス父母会の佐藤さん(4年生男子・2年生女子保護者)は、「保護者の方々は3月11日以降、いろいろな立場でそれぞれ目には見えない、言葉では出せない、大変な想いをなされている。そんな中にあって子供たちの笑顔や真剣なまなざしは私たちにとって希望です。サッカーのようなチームワークで未来を目指せればと思います」と、サンアルタスの父母会を代表してコメント。そんな同地区で被災をした2チームが今回は参加している。

 決して明るい状況ばかりがあるわけではもちろんないが、被災からは6カ月が経過しようとしていて、目の前には憧れのプロサッカー選手がいる。子供たちは思った以上の元気でキャラバンを迎えていた。キャラバンが始まって、1・2年生、3年生、4年生の3チームに分かれてのグループ練習が始まる頃になると、技術習得に夢中のサッカー少年少女の姿しかない。シュートにドリブル、ボールキープの仕方など、各児童のレベルに合わせた練習を終えた後、試合がスタートした瞬間、そこには選手と真剣に勝負できる楽しさを味わいながらプレーする子供たちの「やる気」があった。

「もっともっとサッカーがうまくなりたい。頑張りたい(しんじ・3年生)」
「選手と一緒に試合できたことが楽しかった。もっと練習する(たくま・3年生)」
「シュートできたことがうれしかった。サッカーをもっとやりたくなった(わたる・1年生)」

 スポーツ少年団に所属する子供たちだけに、当然技術習得への欲は高い。そうした子供たちの姿を見て、キャラバン3回目のコーチ役となる平野コーチは「やり続けることが子供たちにとっての夢になる。とにかく子供たちにはいっぱい遊んで楽しんでもらうことが、その先にある復興へとつながると思う」と指導後に話している。

 サッカーをやっている時、ボールを追っかけている時というのはプロ選手だって子供に戻るもの。だからこそ「目に見える被災の現実を忘れて、子供としてサッカーを楽しんでほしい。それを今日は伝えたかった」と、鈴木啓太は言葉を残す。震災でなくなってしまったことが多い中、子供たちには新しい出会いが生まれたのだ。

 今日のキャラバンを含めて、プロサッカー選手と触れ合う機会が瞬間的に増えている大船渡市のスポーツ少年団たち。彼らの中に芽生えているのは「なれないかもしれない、でもプロになる」といったシンプルなやる気だ。「もっとよいサッカーをさせてあげたい。もっとよい環境でプレーさせたい」といった大人の活力を生んでいくにはそのやる気が必要不可欠。コーチや保護者がうれしそうに話すのは“日の丸を背負う子に育てていきたいし、今の元気を忘れずに世界を目指してほしい”といった夢だ。それは酷である現実を乗り越えるために必要な地域の夢でもあると、今思っている。


1対1の指導をする小島選手

ドリブルのお手本を見せる鈴木選手

シュートの指導をする野田選手

子供相手に本気のセーブを見せる加藤選手
名称ふれあいサッカーキャラバン“サッカーの力で日本を元気に!”
主催一般社団法人 日本プロサッカー選手会
支援活動パートナージブラルタ生命保険株式会社
ゼビオ株式会社
協力大船渡市立大船渡小学校
開催日時2011年9月4日(日)14:00~
コーチ(OB)平野孝(日本プロサッカー選手会 執行役員)
現役選手(4名)鈴木啓太(浦和レッズ)
加藤順大(浦和レッズ)
野田紘史(浦和レッズ)
小島秀仁(浦和レッズ)

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