JPFAの取り組み

移籍制度問題

2010年11月1日

1. 契約交渉期間問題

FIFAが定める「Regulations on the Status and Transfer of Players(選手の地位ならびに移籍に関する規則。通称RSTP)」の第18条3項によると、「所属クラブとの契約が満了したか、あるいは6か月以内に満了予定のときにだけ、プロ選手は別のクラブと自由に契約を締結できる」と明記されています。

日本でプレーする多くの選手の契約期間は2月1日から翌年1月31日までとなっています。そうするとFIFAルールによれば、6か月以内に満了予定のとき=翌年1月31日の6か月前、つまり8月1日以降は別のクラブと自由に契約を締結できるということになります。

しかし、2008年シーズンまで日本では上記のルールが適用されていませんでした。翌年1月31日で契約満了する選手に対して、現所属クラブは11月末頃に翌シーズンの更新通知を出していました。契約が切れるわずか2カ月前です。しかも、毎年12月は、所属クラブとの専属交渉期間とされ、他クラブと交渉することも禁じられていました。他クラブとの翌シーズンの契約交渉解禁日が、FIFAルールよりも5ヶ月間も遅く設定されていたのです。

JPFAでは、JFA及びJリーグに対して、このような契約交渉期間の制限をFIFAルールに合致させるよう求めてきました。その結果、2009年シーズンから暫定的にFIFAルールに準じた契約交渉期間が実現し、2010年シーズン以降は、FIFAルールとおり、「所属クラブとの契約が満了したか、あるいは6か月以内に満了予定のときにだけ、プロ選手は別のクラブと自由に契約を締結できる」こととなっています。

2. 移籍金問題

また、2009年シーズンから移籍金制度が撤廃されることになりました。
FIFAルールによれば、契約満了時以降の別のクラブとの契約締結は「自由」にできると規定されています。何らの制限なく、別のクラブに移籍することができるという意味です。

ただ、日本では、長らく、このような契約満了時以降の次の契約を締結しようとする場合、その選手を獲得しようとするクラブが現在所属のクラブに国内独自の移籍金を支払わないと移籍ができない仕組みとなっていました(プロA契約、30歳未満の場合)。最も移籍金の金額が大きい選手は、選手の年俸の約10倍程度の移籍金が必要になり、選手を獲得しようとするクラブは、年俸と併せて約11倍もの資金を用意しないと選手を獲得できない状況だったのです。一般の方が転職する時に、その際の年収の10倍もの金額を、転職先の会社が転職前の会社に支払わないと、転職できなかったのです。

この移籍金制度は、明らかにFIFAルールに違反していました。JPFAでは、2007年以来、この移籍金制度を撤廃すべく、JFA及びJリーグと協議を行ってきましたが、3年かけて、ようやく2009年シーズンからこの移籍金制度は撤廃されることになりました。
今後は、契約満了時における「自由」な移籍が可能になるため、有力選手の複数年契約が増加していくと思われます。この複数年契約の途中で移籍する場合は、「移籍補償金=(違約金)」が発生しますので、今後移籍金と言われる場合は、この「移籍補償金」のことを意味することになります。

3. TC(トレーニングコンペンセーション:育成補償金)制度問題

長らく選手の国内移籍を制限してきた移籍金制度が2009年シーズンに撤廃されたものの、JFA及びJリーグは新たに若手の選手が移籍する場合に発生するトレーニングコンペンセーション(TC)制度を導入しました。このTC制度自体は、FIFAルールにも定められている制度で、選手の一定年齢までの移籍において、獲得クラブが、その直前の所属クラブに対して、「トレーニング期間」に該当するTCを支払う制度です。

JリーグのTC制度は、「トレーニング期間」を初めてのプロ契約の契約期間開始日を含む年度の2月1日(同一クラブのユース、Jrユース出身選手は下部組織に登録された期間から)から満21歳の1月31日までの期間と定めています。例えば、18歳で高校を卒業し、プロ選手になり、満21歳になる1月31日までは「トレーニング期間」となります。
そして、TCが発生する移籍とは、満23歳の1月31日の直前の1月1日までの移籍をいいます。
ですので、18歳で高校を卒業し、プロになった選手が満23歳の1月31日の直前の1月1日までに移籍する場合、獲得しようとするクラブは、現所属クラブに対して、満21歳になる1月31日までの「トレーニング期間」に計算されるTCを支払う必要があります。

ただ、このTCの金額はいくらなのでしょうか?
それは、移籍先のクラブがどのカテゴリーに所属するかでその計算額は変化し、以下の金額となっています。

移籍先クラブ
J1 J2 JFL
J1/J2/JFL 1年あたり800万円 1年あたり400万円 1年あたり100万円
Jrユース年代については、一律100万円

例えば、高卒5年目の選手がJ1クラブに移籍(満23歳の1月31日の直前の1月1日まで※生年月日により該当しない場合もあります)する場合、満21歳の1月31日までの期間(3年)×800万円=2400万円がTCの金額となります。

一方で、FIFAルールは、移籍に関してTCの基準額を、国別にカテゴリーに分けて決めています。欧州ではイングランド、スペインを始めとする「UEFA1」カテゴリーで9万ユーロ(およそ1200万円)、ベルギー、デンマークなどが「UEFA2」で6万ユーロ(約800万円)となっています。また、アジアでは「AFC2」カテゴリーが韓国、日本、豪州、イランで4万米ドル(約350万円)です。

このFIFAルールからすれば、日本の選手が韓国に海外移籍する場合の基準額が4万米ドル(約350万円)になりますが、国内移籍の場合は1年あたり倍以上の800万円ものTCが必要になり、国内移籍の方が海外移籍よりハードルが高いということになります。となると、選手は、国内移籍よりも海外移籍を選択する可能性が高くなり、若手がどんどん海外に流出し、Jリーグが空洞化する危険性もあります。実際、ヨーロッパの6大リーグ以外のリーグにおいては、海外移籍より国内移籍のハードルを下げておかないと、選手が6大リーグに移籍してしまい、自国リーグのレベル低下を生むため、逆にFIFAルールよりも低い金額のTC金額を設定しているリーグもあります。

一方で、韓国の選手が日本に来る場合は、上記FIFAルールの4万米ドルが適用されます。となると、日本のJ1クラブから見れば、韓国の若手選手を獲得する方が、日本の若手選手を獲得するより資金的に少なく済むということになるので、海外の若手選手が日本に流入し、日本人選手の活躍の場が小さくなることも懸念されます。

加えて、JFA及びJリーグは、Jクラブが高校生や大学生を獲得する場合、Jクラブが高校や大学に対して、育成費用を支払うトレーニング費用制度を設けていますが、その金額は在籍1年あたり30万程度とされており、上記TCの金額からすれば大きな差があります。ユース出身の選手を獲得するには、数百万円の獲得費用が必要になり、大卒高卒の選手を獲得するには、数十万の獲得費用で済むわけです。となると、ユース出身の選手と大卒高卒の選手の間で、国内移籍に大きなハードルが生まれていることから、不公平が生まれていることにもなっていました。

そこで、JPFAでは引き続き、JFA及びJリーグとの間で、日本人サッカー選手を中心としてJリーグを作り、育成費用として併存するTC制度とトレーニング費用制度を統一し、そのTCの基準額を「AFC2」カテゴリーと同じ4万米ドル以下に引き下げるべく協議を続けていきます。